会社勤めだった頃、上司がよく言っていた「世の中には三つの坂がある」
というお話。
一つは上り坂。二つ目は下り坂。そして三つ目の坂が「まさか」。
この坂は予期せぬところで出会うので最も恐ろしい坂である・・・
などと朝礼でよく熱弁してたなぁ・・・。
当時は「まさか」の話がでると社員一同「またか」という顔をしていたものだ。
それでは本題へ
先日仕入れたこの仕事着。木綿であることには間違いないのだが、
白くぽつぽつと色落ちしているのが分かる。
何度か見たことのある「紙布」によく似ているのだ!
家に持ち帰り、家族が寝静まった頃、一人夜な夜なお風呂で洗ってみると
さらに愕然としたのである!
ほどけた糸が溶ける感じがする!のである。
「・・・まさか、いよいよ紙布か!?」(徳川埋蔵金の気分)
紙布とは読んで字の如く、紙(大福帳等)を細かく切ってこよりのようにし、
それを績むように糸にして機にかけて織った布のことである。
主に経糸は麻や木綿で緯糸だけが紙の場合が多い。
という、今では見ることがなくなった貴重な布。
でもね確信がないんです。間違ってたら大変じゃないですか。
それでゴチャゴチャ悩んでいるのも嫌なんで、ゴールデンウィーク期間中に
とっても安く店頭(銀座店)に出しちゃいました。
(ホントに紙布だったら10万以上!です。)
結局は売れ残ったんですが四人のお客様がこの布に興味を持ち、
その内の一人は何度も着て、悩んで、お友達からも「買っちゃいな!」と
言われながらも買わずに帰りました。
ずっと僕が「まさか、まさか・・・」とつぶやいていたからかなー。(笑)
それで今日、青山にある「古民芸 もりた」の森田さんに見てもらいました。
「紙布に間違いないよー、との事でした。」
さらに、このように仕事着の形になっているものは非常に珍しいとの事でした。
売れなくてホッとしてます。(笑)
世の中には三つの坂がある。その中の一つ「まさか」は予期せぬところで
出会う坂。
そのお客様も思ったに違いまい・・・「まさか紙布がこんなに安いはずが・・・と。」
善きも悪きも恐ろしい「まさか」、ご注意あれ。